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執筆者の写真まほろば

歴史教育者協議会が声明を発表(2024.2.25)

歴史教育者協議会常任委員会は、2月25日、以下の声明を発表しました。



声明 文部科学省の付属校を置く国立大学への点検の押しつけに抗議する


1月17日、奈良教育大学は学長名で「奈良教育大学附属小学校の教育課程に関する不適切事案のお詫び及び報告書について」を発表しました。


内容は以下の通りです(抜粋)「調査の結果、明らかになった不適切事項は、学習指導要領に示されている内容の実施不足(授業時数・履修年次・評価の実施不足等)、教科書の未使用等です。(中略)また、正義を教え尊ぶ教育機関であり、さらには将来の教師を育成する教員養成大学附属学校でありながら、その使命と責任を果たすことができなかったことは、学長として慚愧に耐えません」。


また奈良教育大学附属小学校小谷隆男校長も、同日、「毛筆指導、道徳、外国語などが不十分であることや、職員会議の決定権が強く校長の権限を制約していることなどに疑問を感じました。その改善に向けて職員会議に提案や指示をすることで本来の姿を取り戻したいと努力しましたが、私自身の力不足によりその改善を図ることは出来ず…」と発表しました。


この発表をうけて、文部科学省は、附属校を置く国立大学学長に対し「適切な教育課程の編成・実施」の点検を1月19日に通知しました。


その中で「本事案は、教員のコンプライアンスの欠如に加え、学校の管理運営や法人組織の機能不全、教員人事の閉鎖性といった発生要因」が「確認されている」。


参考として提示された「自己点検項目」には、教科書を主たる教材として使用しているか、校長による意思決定が適切に行われているか、職員会議の運用は適切であるか、主任制度を通じた適切なマネジメントが行われているか、等が記されています。


小谷校長、文部科学省が共通して問題視しているのが、奈良教育大学附属小学校が学習指導要領に則る教育課程を実施していない点、職員会議の運用が適切でない点です。


また奈良教育大学は、小谷校長の問題点の指摘に対し、「調査の結果、(教育課程上の)不適切事項が明らかになった」ことを認めています。


学習指導要領はあくまで「大綱的基準」であり、最終的な教育課程の編成権は各学校にあります。


私たち歴史教育者協議会は、附属小は子どものわかり方を大切にしていることで豊かな社会科教育実践を展開し発信してきたこと、保護者から教育を支持されていることをよく知っています。


また、附属小は「モデル校」として、公立小では取り組むことが難しい先進的な学習を開発する役割も担っています。


学習指導要領枠の強制、現行教科書枠内の授業の強制の下では附属小の「モデル校」としての役割を十分に果たすことができません。


今回の「教育課程に関する不適切事案」についての問題点の指摘を見ると、小谷氏自身が校長を務める学校の教育課程に関わる問題であるにも拘わらず、附属小で学ぶ子どもの実態をみて指摘しているかどうか、また「モデル校」の役割を理解して指摘しているかどうか疑問です。


小谷校長は「職員会議決定が強く」と指摘していますが、教職員全体で対話しながら豊かな教育づくり、そして創造的な実践研究が保障されているからこそ、現在の教育課程になっているのではないでしょうか。


今回の通知や報告書により、教育現場の教育課程編成や教育実践がさらに文部科学省に対し「忖度」「萎縮」するようになるのではと危惧します。


憲法23条に学問の自由が、教育基本法第2条【教育の目的】には「教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ」と明記されています。


学校には教育の自由、地域・子どもの実態に応じた教育課程の編成の自由があるはずです。


歴史教育者協議会は、この度文部科学省が通知した附属校設置の国立大学への点検が、これまで附属小が保護者の信頼のもと、子どもたちの豊かな学びを目指して積み重ねてきた教育を阻害することに対し、強く抗議します。


文部科学省が通知した附属校設置の国立大学への点検は、文部科学省への学校の「忖度」「萎縮」に繋がると考え、抗議するものです。


2024年2月25日 一般社団法人歴史教育者協議会常任委員会

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