私は美術教育研究団体(新しい絵の会)の事務局長をしています。全国の子どもたちの絵画作品や造形作品を見ていますが、奈良教育大付属小学校の子どもたちの作品も長年鑑賞しています。描くこと、作ることはそれを創作する子どもたちの大切な表現です。描くことや作ることは技術の習得だけではなく、一人一人の思いの反映であるはずです。それが個々の表現を生み、人との違いや個性を形つくっていきます。奈良教育大付属小学校の作品にはその一人一人の個性が満ち溢れています。それは個々の感性を大切に表現へとつなぐ先生がたの指導があるからだと思います。日々の出来事、環境、天候も毎日が違います。その受け取り方も個々さまざまです。そのような感性の教育を一律な定規のように機械的に教えていては、ここで見るような瑞々しい作品群は生み出せません。
目の前にいる子どもたちに寄り添っての指導ができているから豊かな表現が生み出されるのだと思います。このことがこの学校の魅力です。全国の学校での実践作品を見るにつけ、その地域性も環境も生活も異なるのに同じような表現が出てくることに違和感を感じます。子どもたちの柔らかい感性を丁寧に拾い上げていくことだけが子どもたちの豊かな表現に結び付くのです。
その自由で、豊かな教室の作り出している先生方の教育活動がいつまでも続けられるように期待しています。